報道

以下、千葉日報地域ニュースより転載

2006.12.22 upload

医師不足で医療収入激減
経営危機の銚子市立総合病院

 銚子市立総合病院が医療収入の激減で経営危機に陥っている。九月以降、ボーナスや給料支払いのため一時借り入れを繰り返し、二十日に実施した今月分給料の借り入れで負債額は五億五千万円に達した。今年度は決算上赤字六億円が予想され、このままでは単年度で十一億円の財源不足になる恐れ。昨年度の未処理欠損金九億円と合わせ、最悪で負債は二十億円に膨らみ、銚子市も容易に手を差し伸べられない状態だ。
 (銚子・海匝支局 井上 洋)

■6年で医師10人減
 医療収入の減少は全国的傾向で、地方の医師不足が原因。医師数は平成十二年の三十八人をピークに減少が続き、十七年度は三十三人となった。十一年度には入院十二万九千人、外来二十四万五千人だった患者数も年々落ち込んでいたが、毎年九億円程度の一般会計からの補助を受け、経営を保ってきた。
 経営努力で十四、十五年度には黒字を計上するなど、未処理欠損金額を五億円前後で推移させてきたが、昨年度は外来が二十万人の大台を割り、未処理欠損金は一気に九億円台に膨らんだ。さらに今年度は「一人で年間一億円稼ぐ」とも言われる医師六人が同院を去り、患者数の減少に拍車がかかった。

■高まる人件費比率
 医師減に比例して病院全体の機能も縮小できればいいのだが、民間とは異なりままならない。看護師数はこの五年で百八十九人から百七十一人(今年一月一日現在)に減ったが、平成十七年度は医業収益三十五億三千二百万円のところ人件費に二十四億九千二百万円を支出。人件費比率は十二年度の65・5%から70・5%へと5ポイントも上昇。採算ラインといわれる50%はもちろん、類似施設平均54・5%、全国平均54・7%と比べて異常に高い数値になった。

■年度内返済の当て無し
 「返済のめどがあって一時借り入れ制度があるのではないか。来年三月までに支払うという答えだったが、財源がどこにあるのか」
 十二月議会。議員に問われた病院当局も市も明瞭(めいりょう)な方策を示せなかった。
 公営企業法は一時借り入れの年度内処理を明記しているが、ただし書きには『借入額に限って借り換えが出来る』との記述を示しながら、「これをしては不良債権として残る。大変な状況下にある。対応をどうするか市と話しているが答えが見いだせない。早急に検討委員会を立ち上げ見つけたい」。

■銚子電鉄以上の難題
 同病院の死守を公約に掲げ当選した岡野市政にとっては銚子電鉄以上の難題。「来年度予算で一時借り入れの残額を払ったら、九億円の補助を入れてもボーナスまでもたない。夕張と同じことになる」と事態の深刻さを指摘された市長は、自身もこれまで抜本的な改革を病院側に求めてきたとし、「二年前に手を打っておけばこんなことにならなかった」。
 昨年、病院事業管理者に就任し経営者としての資質も求られることになった佐藤博信病院長は「前市長のとき事務局長が二人入れ替わり、なかなか企業会計の数字が分からなかった。市長と話しながら病院立て直しを図りたい」と、苦しい胸のうちを吐露するばかり。
 市長選の争点となり抜本改革に手をつけられなかったのは不幸。しかし、独立採算という建前が市の擁護で揺らぎ、経営責任の所在をあいまいにしてきたのも確か。企業債残高は二十六億円。解散にはこれ以上の巨額支出が伴い経営を続けるしかない。「建て直しに誰が真剣に取り組んできたのか」との議員の問いかけには、同病院の構造的な問題が明示されている。

【写真】医療収入の激減で経営危機が心配される銚子市立総合病院

転載以上


Last-modified: 2007-01-30 (火) (6301d)