• このページは、2010年(H22年)8月にWikiシステムを入れ替えた際に消えたままになっていたページを復活させたもので、2007年(H19年)10月16日に千葉県中小企業家同友会の例会で小川社長が講演した内容を記したものです。
  • 下記本文は2007年に掲載した当時のもので、切れているものを含め、本文中のLINKはそのままとしています。
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小川社長 講演会

小川社長の来歴

  • 小川文雄氏は昭和14年新潟生まれ、現在68歳。千葉県へ来る前は旅館・ホテル業をなさっていたそうです。小川氏によれば、内野屋工務店が銚電を買収する際に新潟から連れてこられたそうです。
  • 当時の内野屋工務店は銚子のリゾート化を計画しており、銚子電鉄支援はリゾートのためのインフラ整備に伴う先行投資だったのではないかと言われています。小川氏が選ばれた理由は、内野屋工務店が旅館業の経験のある小川氏のノウハウをリゾート経営に活かそうとしたとも考えられます。
  • 銚子電鉄の輸送量を説明される際に、比較として都市鉄道の例を挙げられたのですが、山手線が20〜25両編成で1両300人として列車1本で乗客が6千人とのお話がありました(実際には11両編成)。
    鉄道全般にはあまり詳しい訳ではおられない様ですが、銚子電鉄の経営にあたっては、鉄道の知識よりはむしろ小川氏の旅館業としての経験が存分に役立てられているようです(後述)。

国からの補助と内野屋工務店の支援

  • 銚子電鉄は昭和28年まで黒字で、配当があったそうです。国からの決算補助はローカル鉄道全体に対して20年続き、あまり手厚い保護を受けると国が何とかしてくれると甘くなるのかなとの見解を小川氏は示しておられました。また、前経営者も含めて「どうせ潰れるんだからという甘ったれ」があったのではないかとも話されました。
  • 平成5年頃には国からの補助が打ち切られ、対応策がない所は2〜3年でバタバタ廃止。補助が無くなったことから銀行からの融資も打ち切られてしまったそうです。この頃には銚子電鉄は内野屋工務店の傘下に入っており、小川氏によれば「資金的には潤沢に支援」を受けたそうです。
    その額は十数億(数十億?)円に上るそうで、犬吠駅などの改築費用は内野屋工務店が出していたようです。これらの大規模な改築は銚電が借入金を増やして内野屋工務店へ発注していたのではないかとも見られていましたが、同工務店の功罪については改めて考え直す必要があるかも知れません。
    潤沢に銚電を支援した内野屋工務店も、平成10年には倒産してしまいました。

乗客と人口の動向

  • 現在の乗客数は年間約71万人、1日あたり約1900人とのことです。銚子市の人口や銚電の乗客数の減少は大変なもののようで、小川氏のお話によると、高校を率業すると約半数は離銚してしまうそうです。また、4分の1程度は川の対岸の波崎などへ引っ越してしまい、さらに残った人たちの多くも農業や漁業に従事するので、銚電を利用する人は少なくなってしまうそうです。
  • 小川氏のお話の中で興味深かったのは周辺の人口動向で、銚子市は十年間に2万人の人口が減ったが、対岸の波崎などは人口が増えているそうです。なんでも銚子市は土地代が高く、銚子市から去った人たちは地価が半分の対岸へ行き、車中心の生活になってしまうとのことでした。
  • 地方はどこも過疎で人口減少が当然と思いがちですが、銚子周辺の地域では必ずしもそうではなく、銚子市の人口減少の原因には地域内での人口移動という要因もあるようです。銚子の土地代や賃貸料が高いことを歓迎する向きもあるようですが、人口流動も含めて行政がしっかりしたグランドデザインを行うことの必要性を感じずにはいられません。

ぬれ煎餅の誕生

  • 「作れば作るだけ売れる」との社員からの声があり、また小川氏自身の旅館業の経験から「食い物はなんとかなる」と思い、ぬれ煎餅の製造を始めたそうです。
  • 当社は作り方が分からず形は出来るが味はダメで、かなり苦労したそうです。
  • 煎餅業界は全体で年間約3千億円、銚子電鉄の売り上げは約3億円なので市場占有率は約0.1%です。

民事再生と乗っ取り屋

  • 民事再生へ持ち込めという意見があったので弁護士と相談したところ、債務を85%カットしても無理だろうと結論したそうです。また、裁判所が鉄道廃止と判断してしまえばそれが確定してしまうとのことので、この点からも容易には民事再生の申請は難しいようです。
  • 銚電の鉄道事業を廃止させ、食品事業のみの新会社を作ろうとする「乗っ取り屋」が存在することが明らかにされました。この乗っ取り屋は銚電社員を前に、「会社を残すためにいったん解雇する、退職金はなし。5年間は新会社でパートとして雇い、5年後に正社員として雇ってやる。」という条件を示し、乗っ取り屋グループに入るよう勧誘したとのことでした。
  • 小川氏としては、鉄道あっての濡れ煎餅であって、鉄道が無くなっては濡れ煎餅も立ち行かなくなると考えておられるそうです。

銚子電鉄サポーターズ

  • 銚子電鉄サポーターズの会員数について、「3千名は下らないのではないか。」とのことでした。随分とあやふやですが、小川氏によればサポーターズから銚電へ詳細が伝えられておらず、会員が何処にいるのかも分からないとのことでした。
  • サポーターズから銚子電鉄へ970万円の贈呈があったことが説明されました。小川氏によれば「それ以上の額もあるよう」だとのことですが、サポーターズ側は「困ったときにまた言って来い」という対応で、現在までに970万円以外の贈呈は無いとのことです。

労使関係

  • 私鉄労組は強力らしく、特に経営が厳しいところほど強硬なのだそうです。千葉では銚子電鉄も含め十数社の公共交通系労働組合が私鉄総連に加盟しており、統一要求を掲げているので交渉は大変だったようです。
  • 統一要求があるとどうなるかと言うと、「1社でも統一要求を達成しない会社があると、私鉄総連加盟の千葉の十数社全ての労組がストなどの行動を起こす」ということになるそうです。統一要求は「賃金5ヶ月分以上のボーナス」という、大変にハードルの高いものだったそうです。
  • でも無いものは払えないので、銚電ではこの1年間、賃上げ・ボーナスともに全くのゼロだったそうです。統一要求の扱いが、その後に私鉄総連内でどうなったのかは分かりません。
  • 今は残業手当てなども殆んど支払えない状況ですが、「会社が稼げるようになった時に払ってもらえばいい」という姿勢で社員の方々が働いてくれているそうです。社員とその家族の方を含めると、銚子電鉄からの収入で生計を経てている方々は2百数十人に上るとのことです。
  • 小川氏は「労使は敵同士ではない」「厳しくなって銚電は労使が仲良くなった」と話しておられました。「以前は敵同士のようだったのか」という突っ込みは、ここでは自重しておきます。
  • 一緒にやろう、と若い人たちも日頃言えないことを言い出し、最初に出た案が「卸を通さないでインターネット販売」だったそうです。じゃあやってみろと小川氏は言ったものの、ご自身はインターネットがまるで分からないそうです。

ぬれ煎餅の生産状況

  • ぬれ煎餅の工場は、通常午前9時から午後5時までのところ、銚電ブーム以降は午前7時から午後10時までフル生産を行いました。平成18年12月から19年3月一杯までは、土日祝日や正月も休みなく生産を続けたそうです。
  • オンラインショップ停止までに受けた注文を発送するのに、平成19年5月一杯までかかったそうです。電話などで受けた注文については7月末までに捌きましたが、その後は御盆に入って販売店(約130店)からの注文が殺到しているそうです。
  • ぬれ煎餅の生産は工場の人たちだけでなく、運転士・車掌・駅員さんたちも鉄道の業務が終わったあとに工場へ向かったそうです。残業手当はなく、深夜手当が1人千円とのことで、人件費が3割以上も節約出来たとのことでした。
  • 平成18年の4月から11月までの8ヶ月半と、その後の平成19年3月までの3ヶ月半の生産数はほぼ同じなのだそうです。この期間の大増産と高い収益性は、鉄道マンたちの無報酬に近い大変な努力によって支えられていたことになります。
  • ぬれ煎餅の増産については、ブームがいつまで続くか分からないため、新たな設備投資を行う予定はないとのことでした。

地方鉄道存続への動き

  • 銚電ブームにより、視察がかなり増えたそうです。最近1ヶ月の間だけでも、秩父鉄道・津軽鉄道・泉北高速鉄道・滋賀の一畑(島根県の一畑電車、或いは近江鉄道か信楽高原鐵道?)から視察が来たとのことで、他の鉄道会社が銚子電鉄に向ける関心はかなり高いものがあるようです。
  • 行政からの支援として、群馬県での上下分離方式と、いすみ鉄道の状況についてのお話しがありました。特にいすみ鉄道については、「県は放り出すつもりだったらしいが、銚子電鉄のこともあって、この前の協議会で知事はやわらかくなった感じ。」と、千葉県の対応の変化について大変に興味深いお話しがありました。
    いすみ鉄道は再生会議の最終報告(平成19年10月29日付)にて平成20〜21年度を検証期間とすることが決まり、事実上少なくとも2年間の存続が決定しました。また平成19年11月22日には群馬県の上毛電鉄でも、平成20年度から5年間について、これまでとほぼ同様の公的支援を行なうことが上毛線再生等検討協議会で決定されました。
 

銚子電鉄 小川社長へのインタビュー記事掲載

  • 銚電スリーナイン(劇団シアターキューブリック)HPにて、銚子電鉄社長の小川文雄氏へのインタビュー記事が掲載されました。
  • ロープウェイ会社に勤めていたという意外な経歴や、内野屋工務店との関係と新潟から銚子電鉄へ来た経緯、ぬれ煎餅事業を支えた観光業の経験、孫煩悩ぶりなどが掲載されています。

Last-modified: 2011-10-09 (日) (4584d)